何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
次の日、天音はいつも通り授業を受けたものの、気づくと、いつの間にかその日の授業は全て終わってしまっていた。
そんな天音は、どこか心ここにあらずのまま、ボンヤリとした頭で城を出た。
そして、自然と町へと足が向いていた。

「おー!天音」

町をとぼとぼと歩く天音に声をかけたのは、今日も元気いっぱいのりんだった。

「…あ、りん。」
「どないした?元気ないなー。」

どこか気の抜けたその天音の答えに、さすがのりんも心配そうに声をかけた。

「…え、そ、そんな事ないよ。」

天音は心配させまいと、無理に笑ってみたものの、その笑顔はやはりどこか引きつっていて、いつもの天音のものとは言い難いものだった。

「あ、じゃあ、またね。」
「…?」

天音はどこか急いだ様子で、その場をそそくさと去っていった。
りんはそんな天音の様子に、眉をひそめたまま天音を見送るしかなかった。

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