何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「京司…今日もいなかったな…。」
天音はあの日から、毎日のようにいつもの池に足を運んでいるが、京司には会えない日々が続いていた。
もうどの位、彼に会っていないだろうか。
「…元気かな?」
京司と話がしたかった。自分の話を聞いて欲しいのはもちろんだったが…。
「どうしたんだね?今日は浮かない顔だね。」
池から部屋に戻る途中、天音は士導長に出くわした。
「士導長様…。あの、この前は変なお願いをして、すみませんでした。それと、いろいろ教えてもらって、ありがとうございます。」
天音は、士導長にずっと伝えたかった言葉をこの時やっと伝える事ができた。
天音は、あの雨の日に頭が冷やされたのか、冷静さを取り戻し、あれからは天使教に会う事は考えなくなった。
やはり、自分勝手なお願いをするのは、あまりにも無謀だと思い直していた。
それは、月斗の言葉がそうさせたのだろうか…。
「ホッホッホ。どうしたんじゃ?しんみりして。」
士導長は天音を気遣うように、優しく笑いかけた。
「…あの、もう一つ聞いていいですか?」
天音が遠慮がちに切り出したのは、士導長にどうしても聞きたい事がもう一つあったからだ。
あの日、あの雨の中考えていた事を、誰かに聞いてもらいたかった。