何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「ほーらね。」

少年は得意気に口端を上げた。

「俺は本当に天師教なのか?それとも京司なのか?それともどっちでもないのか?」

京司は、そんな言葉を吐き捨て、頭をかかえた。
それは、ずっと自分に問いてきた疑問。
しかし、誰もその答えは教えてくれなかった。

『お前などが、天使教になれるわけないだろう!!』

前天使教には、そう言われ続けた。
そして、宰相達をはじめとした城の者達からも、こんな子供に天使教など務まるはずがない。といった目で見られ続けている。
誰からも認められていないのに、なのになぜ、自分が天使教をやらなくちゃいけないのか…。
しかし、今更戻れない…。
ただの京司には…。
あの頃のような、純粋無垢な子供には、もう戻れない。

それは知っている。


でも…


「誰か教えてくれ!!」


彼が、大声で叫んだ所で、今の状況は何も変わらない。
それを知ってか知らずか、少年は口を固く結んだまま、一言も言葉を発っしようとはしない。


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