何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
りんは、城の前に座っていた。
「で、毎日、毎日、誰を待ってるの?」
りんの頭上から、その声は降ってきた。
「誰でもいいんや。」
りんは真っ直ぐ前を見据えたまま、彼女の問いに答えた。
「そう…。」
「なあ、かずさ。」
りんは、いつにもなく真剣な声で、かずさを呼んだ。
「…。」
『だって、アイツは全て知ってる…アイツの能力は…。』
りんは何かを言いたくてかずさを呼んだが、その後の言葉に詰まってしまった。
それは、みるかの言葉を思い出したからだ。
(言うべきか、言わないべきか…。)
「前に言うてたよな。何でも教えてくれるて…。」
「何でもではないけど。」
りんは、言葉を選んびながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。
しかし、かずさはいつもと同じように、素知らぬ顔で答えるだけだった。
「天音は…。」
りんがゆっくりと、口を開いた。それは、見ないと決めたはずのパンドラの箱をそっと手に取るように。
「やっぱやめや!!」
しかし、突然りんはそう叫び、ふんぞり返って空を見上げた。
「月斗元気やろか?」
そして、何かを紛らわすように、彼の事をポツリと口にした。
「さあ?まだ死んではないみたいだけど。」
かずさは、りんを見下ろすのをやめて、彼の隣に立って広場を眺めていた。
「ハハ。やっぱ、かずさは冷たいなー。」
「で?」
「…月斗は何しに城に行ったんや…?」
「…青を探しに行った。」
「ふーん。青って誰や?」
りんは躊躇なく、その質問を投げかけた。
彼が簡単に捕まりに行くなんて、どこか腑に落ちなかった。
そして、以前はすぐに脱走を図ったが、今回は城から出てくる気配さえない。
「…月斗が殺した人の弟。」
「…。」
いつの間にか、かずさの目線は、遠くにある何かを見つめていた。
それはこの町か、それとも、もっとその先の何か…。
「…月斗の仲間に聞いたんやけど、月斗は、昔めっちゃ仲がよかった恋人がいたみたいなんや。でもその人が死んでから、あいつは荒れだしたんだと。」
「そう…。」
かずさは素っ気なく、相づちをうつだけ。
彼女は話をしたいのか、それともしたくないのか。りんにはその意図は汲み取れない。
「まぁ、誰でも触れて欲しくない事の、一つや二つあるわな。」
「…。」
やっぱり、かずさは何も答えてはくれない。
言葉のキャッチボールがイマイチうまくいかない…。こんなタイプの人間は、りんが今まで生きてきた中で初めてだ。
「京司は元気になったんやろか?」
「…さあ。ま、生きてるみたいだけど。」
やはりかずさは、多くは語らない。
(彼女は、普通の会話が苦手なんやろうか?)そんな事をりんは頭の片隅で考えていた。
「怪我したのは、やっぱり民衆にはナイショなんやな。」
「天師教は神だもの。」
しかし、彼女は、その問いには、間髪入れずに答えた。
何だかんだ自分の話に付き合ってくれてる彼女を、りんはやっぱり敵には思えなかった。
「アイツ…それが嫌なんやな…。」
りんのどこか寂しそうな目は、まだ空の青を写している。
「でも、民衆が必要としてるのよ…。神を…。」
「で、毎日、毎日、誰を待ってるの?」
りんの頭上から、その声は降ってきた。
「誰でもいいんや。」
りんは真っ直ぐ前を見据えたまま、彼女の問いに答えた。
「そう…。」
「なあ、かずさ。」
りんは、いつにもなく真剣な声で、かずさを呼んだ。
「…。」
『だって、アイツは全て知ってる…アイツの能力は…。』
りんは何かを言いたくてかずさを呼んだが、その後の言葉に詰まってしまった。
それは、みるかの言葉を思い出したからだ。
(言うべきか、言わないべきか…。)
「前に言うてたよな。何でも教えてくれるて…。」
「何でもではないけど。」
りんは、言葉を選んびながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。
しかし、かずさはいつもと同じように、素知らぬ顔で答えるだけだった。
「天音は…。」
りんがゆっくりと、口を開いた。それは、見ないと決めたはずのパンドラの箱をそっと手に取るように。
「やっぱやめや!!」
しかし、突然りんはそう叫び、ふんぞり返って空を見上げた。
「月斗元気やろか?」
そして、何かを紛らわすように、彼の事をポツリと口にした。
「さあ?まだ死んではないみたいだけど。」
かずさは、りんを見下ろすのをやめて、彼の隣に立って広場を眺めていた。
「ハハ。やっぱ、かずさは冷たいなー。」
「で?」
「…月斗は何しに城に行ったんや…?」
「…青を探しに行った。」
「ふーん。青って誰や?」
りんは躊躇なく、その質問を投げかけた。
彼が簡単に捕まりに行くなんて、どこか腑に落ちなかった。
そして、以前はすぐに脱走を図ったが、今回は城から出てくる気配さえない。
「…月斗が殺した人の弟。」
「…。」
いつの間にか、かずさの目線は、遠くにある何かを見つめていた。
それはこの町か、それとも、もっとその先の何か…。
「…月斗の仲間に聞いたんやけど、月斗は、昔めっちゃ仲がよかった恋人がいたみたいなんや。でもその人が死んでから、あいつは荒れだしたんだと。」
「そう…。」
かずさは素っ気なく、相づちをうつだけ。
彼女は話をしたいのか、それともしたくないのか。りんにはその意図は汲み取れない。
「まぁ、誰でも触れて欲しくない事の、一つや二つあるわな。」
「…。」
やっぱり、かずさは何も答えてはくれない。
言葉のキャッチボールがイマイチうまくいかない…。こんなタイプの人間は、りんが今まで生きてきた中で初めてだ。
「京司は元気になったんやろか?」
「…さあ。ま、生きてるみたいだけど。」
やはりかずさは、多くは語らない。
(彼女は、普通の会話が苦手なんやろうか?)そんな事をりんは頭の片隅で考えていた。
「怪我したのは、やっぱり民衆にはナイショなんやな。」
「天師教は神だもの。」
しかし、彼女は、その問いには、間髪入れずに答えた。
何だかんだ自分の話に付き合ってくれてる彼女を、りんはやっぱり敵には思えなかった。
「アイツ…それが嫌なんやな…。」
りんのどこか寂しそうな目は、まだ空の青を写している。
「でも、民衆が必要としてるのよ…。神を…。」