何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「かずさは、なんで城におるんや?」

りんは意を決してかずさに聞いた。今なら、彼女がその問いに答えてくれそうな気がした。

「…。」

しかし、かずさは固く口を結んだままで、その冷たい瞳は真っ直ぐ前を見据えている。

「妃候補には見えんしなー。まぁ、ええか。」
「…。」

察しのいいりんには、分かっていた。
「それ以上は聞くな…。」という、かずさからの合図だという事を。

「なぁ天音は…。」
「私は相談所じゃないんだけど。」

かずさがそこでとうとう、しびれをきらした。
「まだ、聞くのか?」という目で、りんの方へと視線を移した。

「…わいはかずさの意見を聞きたいんや。」
「…何て言ってほしいの?」

かずさの冷たい視線は、しっかりとりんへと向けられ、りんもまた、かずさの目をじっと見つめていた。
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