何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「士導長様の許可は貰ってきたわ。今日は部屋で休んでなさい。」
「ありがとう、星羅。」

部屋に戻った星羅は、天音にそう伝えた。
天音はその言葉を聞いて、安堵の表情を見せた。妃候補のくせに即位式に出ないなんて、言語道断。なんて言われたらどうしようと、内心はハラハラしていた。しかし、ここはそこまで厳しい場所ではない事がわかり、一安心だ。

「ハイ。薬飲んで、ちゃんと寝てるんだよ!」

華子は医務室からもらってきた薬を、お水と一緒に天音に渡した。

「ありがとう。華子。」

天音は、その薬を水で流し込んだ。きっとこれで少しは楽になるはずだ。

「じゃあ、私達は、そろそろ行かなきゃねー。」

華子はそう言って、時計を見た。
即位式まで、まだ時間はあるが、早めに行かないときっと場所がなくなってしまう。
即位式は、それだけ注目されているイベントだ。

「じゃ、私が天音の変わりに、ちゃーんと天使教様の顔拝んでくるからさ!!」
「…うん。」

華子の言葉に、天音は少し残念そうに力なく笑うしかなかった。

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