何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】
「げー!!何この人!!」

華子と、星羅は即位式の行われる会場である、城の前の広場に来ていた。
しかしそこは、人、人、人…。
早めに来たのに、何の意味もなかったようだ。
それだけ民衆の期待度は高い。みな新しい天使教の姿を見ようと、足を運んでいたのだ。

「人ばっかで、これじゃ顔見えないじゃん!!」
「…そうね。」

星羅はこの光景を目にしても、華子のように慌てふためく事はなく、ただ冷静にそう答えるだけだった。

「もう、星羅だって見たいくせにー!」

華子のその言葉に、星羅は何も答えず、今日もだんまりを決め込んでいた。
見たい…?一体何を見るの…?
しかし、星羅の冷たい視線は、しっかりとその人混みへと向けられていた。

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