何の取り柄もない田舎の村娘に、その国の神と呼ばれる男は1秒で恋に落ちる【前編】

その目に映る姿が真実か

それはある日の授業後。

「え?」
「天音。もしかして、説明会の時ちゃんと聞いてなかった?」

華子の一言に、天音はまたキョトンとした表情を返すしかなった。
本当ならば華子には言われたくない…。と反論したい所だが、華子はなんだかんだ要領がよく、重要な所はちゃんと押さえているのは事実。

「本当に、町に行っていいの?」

天音は、期待のこめた目で華子を見てそう言った。
天音はちゃんと覚えてはいないようだが、説明会の時にその事はちゃんと説明されていた。
授業が終わった後の自由時間には、城下町に行ってもいい事になっていた。
城下町を見るのも、どうやら妃になるための勉強らしい。

「もー、とにかく今日の授業は終わったし、町に繰り出そう!」

だいたい、15時頃には全ての授業が終わるため、夕食までは、まだ充分時間はある。

「うん!」

ここ数日は、慣れない授業で、疲れ果ててそれどころではなかったが、この生活に少しずつ慣れてきた天音は、華子の提案に大きく頷いた。
そして何より、あの活気ある町をもう一度、ゆっくり見たいと思っていたので、華子と一緒に町に行くことを二つ返事で了承した。

「星羅は?」
「私はいいわ。」
「そっか、じゃ天音行こう。」

華子は軽く返事をして、先陣をきって歩き出した。

「あ、待って華子!」

その後を天音はあわてて追いかける。

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