私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~

 * * *

 雲の中で、雷がゴロゴロと雷鳴を響かせている。
 雨が激しく地に打ち付ける中、私は本殿目指して走った。
 後ろから、廉璃と名乗った女性が何か叫びながら私を追ってくる。
 多分、私を止めるための言葉を発しているんだと思うけど、私はそれに構っている暇はなかった。

「なんだお前は!?」

 本殿の門番が槍をバツ印にして、私の行く手を止めた。

「通してください!」
「そんな事が出来るわけがないだろ! 今何時だと思ってるんだ!」
「いいから、通して!」

 押し問答をしていると、息を切らせながら、廉璃さんが駆けてくる。

「一体、どうなさったんですか!」
 門番が新たに現れた人物に気を取られた隙に、私は槍の下を潜り抜けた。

「あっ!」
 後ろから、驚きの声が上がる。

「お待ち下さい!」
「通るな!」

 廉璃さんが引き止められるのを背後で感じたけど、私は振り返ることなく走り続ける。

(速く、速く行かなきゃ!)

 私は、目的の部屋まで全速力で走った。
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