私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
俺の許へ尋ねに来た柚は、酷く落ち込んでいるようにも見えたし、何かを決心したようでもあった。
柚は、重い口を開いた。
「アニキ、カシラを殺したの?」
衝撃的だった。
まるで、脳を直接何かでぶん殴られたみてえに、視界が揺れた。
バレた。
それだけなら、まだ良かった。
柚は、真剣だった。
哀しんでいた。
俺は、頷く事しか出来なかった。
そして、大切な者を、永遠に失った。
柚は姿を消した。
消息はつかめなかった。
いや、探さなかった。
俺は、柚を手放した。
彼女はもう、俺を見放した。見限った。
俺は心底、バカだ。
軽蔑されても良いから、その手を引いて、逃げ出せばよかった。
嫌われても良いから、想いを告げておけばよかった。
柚が絶対許せない事を、俺はしたんだ。
俺は自暴自棄になって、女と酒に走った。
酒を飲んで騒いで、女を抱けば、柚のことは考えなくて済む。
それが数年続いた頃、俺は柚を忘れた。いや、正確には、記憶のすみに追いやった。すみに追いやった柚は、俺の心に現れる事もなくなった。
たまに顔を見せては、俺を泣きてえ気分にさせたけど、それなりに、楽しい毎日だったよ。
カシラの座に就いてから、柚の事を忘れたくて、酒や女以外に、俺は界隈の山賊や盗賊を壊滅させて回った。
その戦績のせいか、いつの間にか皇龍団は、恐れられると同時に一目置かれるようになった。
有名になるにつれ、軍本部に睨まれて、何度かやり合った。
ほぼ、俺の力技と、月鵬の作戦による戦だったが、負け戦は殆ど経験しなかった。三十回くらい戦って、その内の一、二度だ。それも、初戦のころの話だ。