私の中におっさん(魔王)がいる。~花野井の章~
そんなある日、柚の縁談話が持ち上がった。
柚が成長した頃にと、以前からカシラが狙っていたのは知っていた。ついに、来るべき時が来たんだと、俺は選択肢を迫られた。
諦めるか、俺の想いを告げて、一緒に逃げてくれと懇願するか。
そんな時に、月鵬が俺に尋ねてきた。
「剣之助様は、柚様を男性として愛していますか?」
俺の妹への、けだものみたいな想いがばれている事にまず、驚いた。そして次に、感心した。さすがは月鵬。俺が恐れるだけのことはあるじゃねえか。
多分、俺が本気で恐れた女は、後にも先にも月鵬だけだろう。
俺は観念して頷いた。
どうせバレたところでどうしようもねえし、月鵬が俺を嫌悪することはねえように思えたからだ。
月鵬は予想通り、すんなりと受け入れてくれた。
そして、解決策を見つけましょうと意気込んだ。
そしてある日、月鵬は、神妙な顔つきで、カシラを暗殺しましょうと告げた。人を殺さない――柚と約束していたことだ。
破るわけにはいかねえと、俺は悩んだ。だが、俺はカシラを殺す事を決めた。それは月鵬に再三言われたからじゃねえ。
俺は、決断したくなかったんだ。
柚を諦めたくもなかったし、柚への恋情を柚自身に知られたくもなかった。現状維持がしたかった。
想いを告げて、嫌われちまうのが怖かった。
軽蔑の眼差しで見られたら、と思うと、柚に告げる勇気が持てなかった。
実の妹に恋情が沸き立つなんて、俺はけだものだなと思った。
そしてそれを、柚は決して受け入れねえだろう。そう思っていた。
だがみすみす他の男に取られるなんて、許せねえ。だから俺は、自分のために、カシラを殺したんだ。
誰のせいでもねえ。
俺が望んで、俺がやった。
そこに、後悔はねえはずだった。
あの時までは……。