御坂くん、溺愛しないで。
それにしても、私はどうしてこんなにもイライラしているのだろう。
御坂くんがしつこく私を追いかけてきたから?
いや違う。
あの時はただ恥ずかしくて逃げたかったのだ。
それなのに今はイライラしている自分がいた。
理由を探そうとすれば、先ほどのことが頭に浮かぶ。
どうして御坂くんは女の子に名前を呼ばれて立ち止まったのだ。
まともに質問なんか答えるんだ。
そのせいで余計に迫られ、その場から去れなくなったのだ。
相手が二年の先輩だからだろうけれど。
優しいからだろうけれど。
御坂くんは女の子が苦手だと琴葉が言っていたのに、どうして普通に受け答えしていたの。
「御坂くんのバカ…」
別に何もされていないというのに、バカと口にしてしまう私のほうがずっとバカ。