御坂くん、溺愛しないで。
結局この間、御坂くんと行った中庭にやって来た私。
今日はカップルがおらず、本を読んでいた男の人だけがベンチに座っていた。
その男の人とひとつベンチを開けて座り、ランチバックからお弁当箱を取り出す。
まさかひとりでお弁当を食べる時が来るだなんて思わなかった。
「……んー」
とはいえ今更教室に戻るのは気が引ける。
ため息を吐きながら、お弁当の蓋を開けて食べることにした。
けれど食欲が湧かないため、箸を持つ手が止まる。
「はぁ…」
一度ため息を吐いてお弁当をじっと見つめていたその時。
「なあ本当にいるのか?」
「マジだって!マジで噂の木原咲ちゃんがひとりで中庭行くの見たんだよ!」
校舎と中庭を繋ぐ廊下から 、明らかに複数の男の人の声が聞こえてきて。
ドクンと心臓が嫌な音を立てた。