御坂くん、溺愛しないで。



「よしっ、行くよ咲」
「えっ…」

「私も頑張って、ほら…秀太の元行くから。
だから咲も行くの」


何やら決心した様子の琴葉。

見ると、ちょうど筧くんが体育館から出てきたところだったのだ。


「で、でも…」

「このまま帰ったら、それこそさっきの女子たちに敵わないよ?いいの?逃げて」


逃げる。
私は確かに逃げようとした。

けれど、琴葉の言う通りここで逃げていいのだろうか。


御坂くんは本当に私と一緒に帰りたいと思ってくれている?

さっきの女の子たちのほうが気楽に話せていいのではないのか。



不安だけが募っていく。


「せっかくここまで来たのに何もしないで帰るの?」
「それは…」


琴葉の背中に隠れながらもう一度御坂くんのほうを向けば、彼は何やら周りを見渡し始めて。

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