御坂くん、溺愛しないで。



怖くなった私は御坂くんとの距離を詰め、じっと男の人を見つめる。


「あれ、もしかして俺って避けられてる?」

「拓巳(たくみ)、木原先輩は男が怖いからいきなり近づいたらダメだ」


拓巳…御坂くんと同期の男の人は“拓巳くん”と言うらしい。


明るい茶色の髪は一見チャラそうに見えるけれど、人懐っこい笑みがそのチャラさをかき消していた。



「すみません、でも木原さん。
俺は理玖と仲良しなんで怖くないですよ」

私が怖がると、普通男の人は戸惑った反応をする。


けれど拓巳くんはずっとにこにこしており、御坂くんと同期ということもあってか不思議と恐怖心を抱くことはなかった。


「じゃ、じゃあ拓巳くん…」
「……っ、はい!なんですか!」


私が御坂くんの腕を掴みながらも、恐る恐る彼の名前を呼べば嬉しそうに目を輝かせた。


一瞬大きな声を出されて驚いたけれど、まるで子犬のような反応をする拓巳くんを見てかわいいな、なんて思ったり。

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