御坂くん、溺愛しないで。



「木原先輩」
「は、はい…!」

「先に行きましょう」
「わかった…」


ダメだ、やっぱり御坂くんの表情や声が優しくない。
いつもの御坂くんではないのである。


「じゃあね咲、バイバイ」
「うー……」

どうして琴葉はそんなにも楽しそうに笑っているのだ。


琴葉だけではない。
なんと筧くんまでニヤニヤしていて。


「先輩、早く来てください」
「あっ、す、すぐ行きます!」

けれど御坂くんに催促されてしまったため、ふたりに迫ることはできず。


諦めて少し先を歩く御坂くんの背中を追いかけた。


「あの、御坂くん」
「何ですか」

「歩くのが、速くてっ…」


裏門を出てからも、スポーツバッグを肩からかけて先を歩く御坂くんは速くて、追いつくのがやっとである。

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