御坂くん、溺愛しないで。



「俺は大丈夫ですから、気にしないでください」

バカにしたような言い方をさせたというのに、御坂くんは笑っていた。


まるで全部吹っ切れたような微笑み。


「じゃあ真司、俺たちはもう行くから」

決して真司くんの話に対して言い返さず、食ってかからず。


冷静に返してから私の手を引く御坂くん。


そのような御坂くんの反応を不満に思ったのか、真司くんがぎゅっと自分の手を握りしめたのが見えた。



「理玖」

私たちが真司くんの横を通り過ぎたところで、もう一度彼は御坂くんの名前を呼んだ。


ゆっくりと足を止める御坂くんだったけれど、振り向こうとはしない。



「今度、地区大会があるのは知ってるか」
「ああ、知ってる」

「その大会は理玖の高校も、俺の高校も出場する。三年は出れない試合だから、理玖ならスタメンに選ばれるだろ」

「それはわからないけど、出られるよう頑張るつもり」


御坂くんからも真司くんからも感じられる圧。
少し怖い。

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