独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
弁護士は多忙だ。平日は裁判所に行ったりクライアントと会ったりで時間が取れないぶん、土日に集中して書類仕事をしていることが多い。
「なにか、お手伝いできることはありますか」
私を見下ろす彼は、『王子様みたい』という表現がぴったりの美形だ。甘く整った顔にくわえて職業が弁護士となれば、世の女の子が放っておくはずがない。
事務所内でも女の子たちから『蒼(あお)王子』と呼ばれて騒がれているけれど、特定の彼女がいるという話は聞いたことがなかった。
「なにもない。冨永さんは休みだろ。勉強してろ」
つまらなそうに言う彼は、めったに笑わない。皮肉っぽく口角を上げることはあるけれど、優しく微笑んだところは一度も見たことがないし、弁護士とは思えないほど口も悪い。