独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる



 結局、午後はあまり仕事にならず、私は久しぶりに定時で退社した。まだ明るい空を見上げて、大きなため息が漏れる。

「どうしよう」

 峰島先生に『予定がある』と言った手前、まっすぐ家に帰るのは憚られた。あずさを誘ってみようかなと思ってメッセージを送ったけれど、すぐに【今日は無理】との返信が来てしまった。

「さすがに急すぎるよね……」

 地下鉄の駅へ向かいながら、もう一度ため息をつく。

 本当は、私だって峰島先生と一緒の時間を過ごしたい。だけどそれは、未来の自分の首を絞める行為にほかならない。

 引き返せないところまでハマってしまったあとで、彼が実際に久世さんとうまくいったら……私は用済みで放り出されることになる。

 そこまで考えてからぞっとした。

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