独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
ダメ。そんなのつらすぎる。いまでさえ十分苦しい状況だというのに。
でも、もし、それが私の勘違いだとしたら?
本当は峰島先生も、私のことを想ってくれているとしたら?
……なんて、さすがに虫がいいかな。
ぐるぐると同じようなことを考えながら地下鉄への階段を一段下りた時、ふと思った。
そうだ。こんなふうに考え込んでしまうのは、すべて私があの夜のことを覚えていないせいだ。
陽が沈んだあとでも日中の強烈な日差しの余韻が残っている今と違って、薄手のコートを羽織るくらい過ごしやすい陽気だった5月の夜。あの日を境に、私と峰島先生の関係は大きく変わってしまった。