独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
「俺のフィアンセの、有村真凛さん。真凛、こちらはパラリーガルの冨永さんだよ」
「え、フィアンセ⁉」
私が声を上げるのとほぼ同時に、頭を下げかけていた美人がものすごい勢いで顔を上げた。
「ちょっと千暁(ちあき)さん! 適当な嘘を言わないでください!」
香坂先生の下の名前を呼び、弁護士である彼に向かってあまりにもはっきり物を言う彼女に、あっけにとられる。
「嘘じゃないだろ? 近い将来結婚するんだから」
「け、結婚って……」
すべてを包み込むような穏やかな笑顔の彼に、彼女は毒気を抜かれてしまったらしい。頬をわずかに染めながら改めて私に向き直る。
「有村と申します。ホダカ・ホールディングスで法務を担当していて、香坂先生にはずいぶんお世話になりました」
「公私ともにね」