独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる

 えっと思う。てっきり私と香坂先生以外は全員帰宅したと思っていた。そして姿を現した人物に、私は息をのむ。

「み、峰島先生……」

 私の視線を追って振り返った香坂先生は、若手弁護士に気がつくと少しだけ驚いた顔をして、また元の笑顔に戻った。

「……じゃあ、お先。よいお盆休みを」

 そう言うと、彼はいつもの穏やか笑顔を見せる。通りがかりに後輩弁護士の肩をポンと叩き、自室に置いていたカバンを回収してフロアのドアを出ていった。

 キイと音を立てて閉まるドアを見やってから、峰島先生が私を振り返る。

 その表情は、いつもと同じようで、少しだけちがっていた。

 つんとした顔にはちがいないけれど、なんだか怒っているような……。

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