独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる

「こ、こんな時間までおつかれさまです」

 沈黙が妙に痛くてそう口にすると、峰島先生はいきなり私の腕を引っ張って歩き出した。

「えっ」

 彼の机があるアソシエイトルームに引っ張り込まれ、窓の外の景色が目に入った。

 うすく雲がかかった夜空の下、隣に建つビルの明かりが注ぎ込んで、この部屋の電気が消えていることに改めて気づく。

 峰島先生も、帰るところだったのかもしれない。

「あ、の……?」

 解放された腕を反対の手でさすっていると、彼は窓ガラスに近づいてブラインドを下ろした。

 隣のビルの明かりが遮られ、室内がいっそう薄暗くなる。

 そのせいで、私の正面に戻ってきた彼の表情をはっきり見ることができなかった。

 微かに差し込む隣のビル明りが、形のいい唇を薄闇に浮き上がらせる。

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