独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる

「昨日、香坂先生と飲みに行ったのか」

 疑問とも確認ともとれる言い方に「えっ」と声を上げる。なにを言われたのか、一瞬意味がわからなかった。

「ええと……」

 言葉を探しながら、さっきの私と香坂先生の会話が聞こえていたのだと気づいた。

 ひとりでバーに行って、そうしたら偶然香坂先生が来たんです。

 そう説明しようにも、ひとりでバーに行ったことを知られるのはまずい。なにせ、峰島先生の誘いを『先約があるから』と断っているのだ。

「あの人との約束があったから、俺の誘いを断ったってことか」

 続けられた言葉は、静かな口調なのに鋭い棘が織り交ぜてあるようだった。

 でも私を攻撃するというよりは、口にした本人を傷つけて出てきたような声だ。妙に痛々しくて、胸が軋む。

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