独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる

「す、すみません!」

 自分が叩いたばかりの場所に手を添えると、滑らかな頬が少しだけびくりと揺れた。

 スイッチが切れたみたいに止まった峰島先生が、ゆっくりこちらを振り返る。暗がりで相変わらず表情はよくわからないけど、大きな目は微かに潤んでいるように見える。

「ごめんなさい!」

 右手の痛みを忘れて悲鳴に似た声を上げた。 

 峰島先生に平手打ちなんて、私、なんてことを……!

『国宝級の顔』に傷でもつけたら、償いようがない。長澤さんに叱られている自分を想像しながら戦慄した。

 私の正面に立ち尽くし、さっきの暴走が嘘みたいに固まっている彼を見て、でも、と思う。

 こうでもしなければ、止まらなかったかもしれない。

「ごめんなさい」ともう一度謝り、峰島先生の頬から手を離した。

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