独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる

「近づく努力はしましたか?」

「なんだよ、やぶからぼうに」

 凛々しい眉がわずかに寄るのを見ながら、思う。

 私と会って体力を使うくらいなら、好きな人との距離を縮める方が建設的じゃないですか?

 そう皮肉を言えれば、曇ってばかりの私の心も少しは晴れ間がのぞくのだろうか。

 カウンターの向こうから私の方へ缶ビールを滑らせると、峰島先生は自分の缶のプルトップに指を掛ける。一口喉に流し込んでから小さく息をついた。

「そりゃ近づきたいけど、まだ足りないからな、俺」

「足りない……?」

 近づきたい、という正直な発言に胸が軋むのを感じながら、私はいい女のふりをして相槌をうつ。

< 144 / 181 >

この作品をシェア

pagetop