独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
便せんに目を通しながら思い出されるのは、去年解決した事件だ。赤信号を無視した車に轢かれて亡くなったのは、四歳になったばかりの娘をもつ父親だった。
保険会社からの提示金が低額だった被害者遺族に裁判を提案したのは、たしか峰島先生だ。その結果、最初の提示金額の三倍の額が支払われることになった。
その被害者の娘さんと、峰島先生はやりとりを続けていたらしい。
『本当は、すごく優しい人なんだよ』
さっきあずさに言ったばかりの自分の言葉が脳裏をよぎる。
そう。峰島蒼史は口も態度も悪いけれど、優しい。
たいていの弁護士のように事件を解決して終わりではなくて、被害者やその家族にどこまでも心を寄り添わせ、彼らが前に進んでいけるまでフォローをする。事務所の人間には内緒で、こっそりと。