独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
手の届かない、あの人。
わざわざそう表現したということは、少なくともその相手が今、目の前にいる私ではないことはたしかだ。
そしておそらく、峰島先生が想いを告げられないという相手は、事務所で笑った顔ひとつ見せたことない所長秘書の久世麗香さんなのだろう。
胸がゆっくりとねじれていくみたいだった。
息ができなくて、顔が歪みそうで、慌ててうつむく。
「どうした?」
「いえ、すみません。ちょっと」
お手洗いに行くと断って、席を立った。
足がふらつきそうになるのをどうにか堪えて、洗面所の扉を開く。手を洗い、壁に掛かった四角い鏡に自分を映した。お酒を飲んだのに、顔は赤くなるどころか血の気が引いている。