独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる

 カップを手に取って彼に視線を戻すと、ジャケットの肩に細かな水滴がついていることに気づいた。

「雨ですか? 肩が」

 私がハンカチを差し出すよりも先に「ああ、さっき降ってきた」と手で軽く払い、彼はちらりと視線をよこした。

「……今日。家、行っていい?」

 いつもの鋭さがないためらうような目線に、どきりと胸が鳴る。これまで何度か私の部屋にきたことがあったけれど、こんなふうにお伺いを立てたことなんてあったっけ。

 不思議に思ってから、ふいに納得した。

 前回ふたりで会ったのは先々週の金曜日、お酒を飲んだ日だ。あのとき私の気分が優れないせいでお開きになったから、彼は体調を気にかけてくれているのだろう。

 やだな、と思う。

 そんなふうに優しくしないでほしいのに。

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