独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる

「あーもう出ねーと。じゃあ、今日は二十一時くらいに上がれると思うから」

「ごめんなさい」

 廊下に向かいかけた背中に言うと、峰島先生はきょとんとした顔で振り向いた。

「え?」

「今日は……その、まだ体調がよくなくて」

 彼の目に宿っていた光が、かすかにしぼんだ気がした。私に注いでいた目線を脇に逸らすと、なんでもない素振りで頭を掻く。

「あ、あー……そうか」

「ごめんなさい」

「……いや。じゃあ、また今度」

 そう言い置いて給湯室を出ていった背中は、どことなくしょんぼりしているように見えた。





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