独占欲強めな弁護士は甘く絡めとる
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それから一週間、私はますます身を粉にするように働いた。ありがたいことに、やるべき仕事ならいくらでもある。
「失礼します。赤賀(あかが)先生、頼まれていた資料、判例ごとにまとめました」
若手弁護士三名の机が並べられたアソシエイトルームには、午後の日差しが差し込んでいる。
入って右手のキャビネットを背にした机は、所内で唯一の女性弁護士、向坂(さきさか)先生の席だけれど今は外出中のようだ。奥の窓ガラスを背にしている机の方は見ずに、私は左手の書棚のほうに向かった。
「冨永さん、ありがとう。助かるよ」
長めの前髪に隠れた目を上げて申し訳なさそうに言うのは、峰島先生と同期合格で年齢も同じ二十八歳の弁護士、赤賀朔也(さくや)先生だ。