三時は特別な時間
「この指輪、君にあげる。日本に帰っても忘れてほしくないんだ」

恒音は、右手の人差し指に指輪をはめる。オレンジの石がキラリと輝く。指輪は恒音によく似合っていた。

「……忘れないで。必ず、帰ってきて」

シオンが恒音に言う。その顔は、寂しさを必死で誤魔化しているような顔だった。

「忘れないよ、絶対に。必ずまたここに戻ってくるって約束する」

その約束やシオンのことを忘れることなく、恒音は五年後にカナダに戻ってきた。あのカフェはまだあり、入ると背の高くなったシオンがいた。

「シオン?」

恒音が声をかけると、シオンは「……恒音?」と振り返る。恒音は嬉しくて、すぐにシオンの隣に座った。

「この指輪、覚えてる?帰ってきたの!」

恒音がそう言いながら指にはめている指輪を見せると、シオンも懐かしそうに微笑んでくれた。

話に花を咲かせている最中に、シオンに言われたのだ。

「I have loved you forever.(あなたのことがずっと好きでした)Will you go out with me?(僕と付き合ってくれませんか?)」
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