三時は特別な時間
穏やかな時間が流れていたのだが、シオンが恒音に言った。

「実は、仕事で一年ほど出張に行かないといけなくなったんだ」

「えっ……?」

恒音は驚き、シオンを見つめる。シオンは辛そうな表情で言った。

「一年ほど、オタワに行かないといけなくなったんだ……」

オタワ、カナダの首都だ。プリンス・エドワード島からはかなり離れている。

恒音とシオンの職場は全く違う。しかし、会いたい時に少しでも会えるような近い距離だった。思わず恒音はシオンに抱きついてしまった。

「電話とメール、絶対にしてね」

「……うん」

「メイプルばっかり食べちゃダメよ」

「……うん」

「ちゃんと帰ってきてね」

「……うん、もちろん。約束する」

こうして、恒音は初めての遠距離恋愛を体験することになる。



あれから一年。恒音はカエデとともに、プリンス・エドワード島でシオンが帰ってくる日を待っている。

「帰ってきたら、おいしいホットケーキを作らなきゃね。メイプルをたっぷりかけてコーヒーも用意しなきゃ……」

散歩から帰ってから、恒音はカエデにそう言った。

本当はシオンは今日帰ってくるはずだったのだが、急遽帰れなくなってしまったらしい。帰ってくるのは明日だそうだ。
< 7 / 12 >

この作品をシェア

pagetop