追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました

 私はハウスに撒かれる前に缶を倒し、中の除草剤を空にしてしまおうと考えた。しかし、缶容器は男三人でやっと持ちあがる重さだ。
 ……駄目だ、缶のままじゃ倒せない。
 私は歯がゆい思いのまま、三人の動向を見つめた。
 ……あ、そうだ! ふと、ポケットの中の通信機の存在に思い至る。
「よし、三等分にするぞ!」
 その時、アニキが柄杓を手に掴み上げて叫んだ。
 ……状況が動いた! 私は慌てて通信機のブザーを鳴らすと、三人を行動を注視した。
「アニキ、これに分けるッス!」
 舎弟兄弟が素早く台車に積んであった肩掛け式の農薬散布機を差し出す。アニキが受け取って、三台のタンク部分に、順番に缶容器の中の液体を注いでいく。
 ……カーゴに応援を頼んだけれど、やはり到着を待つ余裕はない。
 除草剤が三等分に分け終わったところがチャンスだ。ハウスに行く前に三台の農薬散布機を倒し、中身を空けてしまおう……!
 私は緊張に手に汗を握り、アニキの作業を見守った。
「よーし、これでいいだろ。おめえら、撒きに行くぞ。タンクの蓋を締めて背負え」
 ……今だ!

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