追放された悪役令嬢ですが、モフモフ付き!?スローライフはじめました
「……カーゴ」
私はキラキラと眩いカーゴの残像を惜しむように、小さくその名を呟いた。
「ガウッ!」
え? 何故か、カーゴという名に『凶悪な毛むくじゃら』が返事をしたように聞こえ、私は反射的にずっと閉じてた瞼を開けた。
「え!?」
するとまさか、『凶悪な毛むくじゃら』が行儀よく床にお座りし、シフォンケーキのお皿をジーッと、ジーッと見つめていた。しかも何故か、その皿にはシフォンケーキが半分残っていた。
「た、食べないの?」
『凶悪な毛むくじゃら』は私を見ると、半分残ったシフォンケーキの皿の端にモフモフの右前足を掛けて、ツツツッと私の方へと押しやった。
「ガウ。……ジュルリ」
私が口にした「食べないの?」という問いは、「私を食べないのか?」という意味だったのだが、『凶悪な毛むくじゃら』はまるで「半分こ」とでも言うように鳴き、ついでに涎を啜った。
「もしかして、私のために半分残してくれたの?」
「ガウッ!」
……これ、肯定してるよね!? どうやら『凶悪な毛むくじゃら』は、実はたいへん『お利口さんな毛むくじゃら』だったらしい。
――ゴクリ。
無意識に唾を飲んだ。