君のとなりで恋をします。─上─
頭がまともに働かず、ただ二人を見送る私の手を、咲花がギュッと握る。
「香純。大丈夫だよ。
…きっと誤解だから。」
「うん…そうだね。」
柊吾は、誤解だって言った。
だからその言葉を信じる。
だって柊吾は、嘘なんてつかないもん。
今日初めて会った桃奈さんの言葉なんかより
10年以上一緒にいる柊吾を信じる。
大丈夫。
あれは桃奈さんの冗談。
自分に言い聞かせるように、何度も心の中で呟く。
そんな私の隣で、咲花はただ何も言わずに手を握ってくれていた。