サヨナラのために
「お前ら、1週間後には期末試験があるからな。来年には受験を控えてるんだ、しっかりしろよ」
授業が終わるチャイムが鳴った。
教師の忠告をまともに聞く生徒なんてほとんどいなくて、すぐさまお弁当を出したり購買に行ったり、ゆるい空気が教室に流れる。
「神野さん」
控えめな声に、私は振り返る。
クラスの、あまり話したことのない子。
私は「なに?」と応えて愛想笑いをする。
「呼んでるよ、岡本くん」
慌てて教室のドアを見ると、ニコニコしながら手を振る誠也がいた。
「美羽」
そんなふうに、名前を呼ばないでよ。
クラスの女子が、そっと、それでも確実に誠也を見る。
ほんとに、誠也は鈍感だ。