サヨナラのために


「…美羽?」


声に、心臓が跳ねる。


教室の扉を振り返ると、ユニフォームを着て汗を流す誠也が立っていた。


いつから、いた?


「どうしたの」


私は慌てて駆け寄る。


「…美羽のことだから、絶対手伝ってほしいときも手伝ってって言わないと思って」


誠也の目が、スッと先輩に向けられる。


「あっ、孝宏先輩。たまたま知り合って、作品手伝ってくれてて」


「どーも」


孝宏先輩の声に、誠也は軽く会釈をする。


いつも通りの表情。


でも、空気で、わかる。


「美羽、ちょっと来て」


誠也、怒ってる。

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