サヨナラのために


腕を引いたまま無言で誠也は空き教室に入った。


手が触れられているところが熱い。


「…誠也」


「他のクラスの人は?いるんじゃなかった?」


「…みんな、他の作業してて。看板だけやるわけにもいかないでしょ」


「…やっぱり俺も手伝う。部活も、文化祭までは自由参加だし」


「ダメ!!」


想像以上に大きな声を出してしまって、驚く。


「誠也は、自分のクラスのことやって。看板は、なんとか間に合わせるし、大丈夫だから」


「…アイツはいいのに?」


誠也の目を見て、固まる。


熱を帯びた視線。


こんな目、初めて見た。


求めていて、それでていてどこか突き放している。


その熱さに焦がされる。


怖くて、愛おしくて、動けない。


「美羽」


ゴツゴツした大きな手が、私の頬に触れる。


怖いのに、優しい。


私は、ギュッと目を閉じる。


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