サヨナラのために


ちゅ、と音がして鎖骨あたりにピリッとした痛みが走る。


「っ…え?」


恐る恐る目を開けると、そこにはいつもの誠也がいた。


「…怒ってる?」


「心配してる」


優しく答える誠也の目に、もう熱はない。


「あの先輩、そんないい噂聞かないから。牽制」


トン、と誠也の指が私の鎖骨の上の紅い華に触れる。


「ばかっ」


「幼なじみのこと、心配くらいするだろ」


じゃあな。


そう言って誠也は教室を出て行ってしまった。


私は力が抜けたようにへたり込む。


熱が、私の体を支配して離さない。


「…幼なじみは、こんなことしないんだよ」


キス、されるかと思った。

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