サヨナラのために
文化祭まであと5日。
そろそろ看板を完成させないといけない。
私のクラスは私と孝宏先輩だけで準備しているだけあって、やっぱり遅れをとっている。
そろそろ、頼まないとかな。
放課後、それぞれが自分のやるべき準備へと慌ただしく教室を出ていく中、割と優しそうな子たちのいるグループに声をかけた。
「あのさ、このあと、時間ないかな?」
「あっ…ごめん、本当に忙しくて…私たちの作業、このままだと間に合わなそうで…」
申し訳なさと、怯えの混じった表情。
私はため息をつきそうになるのを堪えて、笑顔を作る。
「そっか、ごめんね、突然声かけて」
「ううん、こっちこそ」
ごめんね、と口々に言って彼女たちは小走りに教室を去った。
…もし誠也だったら。
もっとうまく声かけて、楽しくみんなでできたんだろうな。
そんなしょうもないことを少し考えた。