サヨナラのために


文化祭まであと5日。


そろそろ看板を完成させないといけない。


私のクラスは私と孝宏先輩だけで準備しているだけあって、やっぱり遅れをとっている。


そろそろ、頼まないとかな。


放課後、それぞれが自分のやるべき準備へと慌ただしく教室を出ていく中、割と優しそうな子たちのいるグループに声をかけた。


「あのさ、このあと、時間ないかな?」


「あっ…ごめん、本当に忙しくて…私たちの作業、このままだと間に合わなそうで…」


申し訳なさと、怯えの混じった表情。


私はため息をつきそうになるのを堪えて、笑顔を作る。


「そっか、ごめんね、突然声かけて」


「ううん、こっちこそ」


ごめんね、と口々に言って彼女たちは小走りに教室を去った。


…もし誠也だったら。


もっとうまく声かけて、楽しくみんなでできたんだろうな。


そんなしょうもないことを少し考えた。

< 83 / 153 >

この作品をシェア

pagetop