サヨナラのために


「にしても美羽ちゃんは信用されてないんだね…」


「先輩、否定はしませんが今は手を動かしてください」


結局また2人でやることになってしまった。


スピードアップすれば、きっと間に合う。


我ながら出来は悪くない。


絶対、誠也ファンの子たちに文句なんて言わせないんだから。


「あれ、美羽ちゃん今日はシャツ上まで留めてるんだねー残念〜」


「どっどこみてるんですか!」


先輩の目敏い指摘にドキリとする。


この人まさか、気付いてる?


私の心配をよそに、先輩は鼻歌を歌いながら慣れた手つきで絵具を塗っていく。


「…先輩、終わったら先輩の好きなもの奢りますね」


「えっほんと!?俺遠慮しないよ!?」


先輩の無邪気な笑顔に思わず笑みがこぼれる。


誠也以外の人といて、こんなに居心地がいいのは初めてだ。




『いつか愛になる』





先輩の言葉に、少しだけなびきかけている自分がいた。


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