サヨナラのために


ニヤニヤとこちらを向く、誠也ファンたちの目。


ああ、そっか。


初めから、そのつもりだったんだ。


初めから、私に看板を任せる気なんてなくて。


わざと作らせて、台無しにするつもりで。


不思議と、悲しい、とか悔しい、とかいう感情は浮かんでこなかった。


ごめんなさい、先輩。


せっかく手伝ってくれたのに。


先輩の無邪気な笑顔を思い出して、少しだけ、鼻の奥がツンとした。

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