密偵をクビになったので元主のため料理人を目指します!
信号待ちをしている間、私は改めて手に持ったままの履歴書を眺めていた。
そうして呆けていると、どこからか悲鳴が聞こえたことを憶えている。一緒になって「危ない」だとか「逃げて」とか、いろんな人の焦った声が混ざり合っていた。
それから身体に強い衝撃を感じた。
それで、それから……
沙里亜はサリアとして別の世界に生まれ変わっていた。
前世では文明の発達した世界の一般家庭出身。仕事はOLをしていたらしいけれど、まあ、ね。最後にクビになったとは言わないように!
所詮、過去は過去だと私は思う。私は新しいこの人生で主様という仕えるべき最高のお方と巡り合うことが出来た。それでいい。
そう、過去などは些末な問題だ。失われた過去より大切なのはいま、現在。
何故って? 何故なら……
生まれ変わった先でも解雇の危機!!
飛び起きた私は過去と現在が重なり混じり合うという、奇妙な体験をしていた。それというのも自身が長椅子に寝かされていたからだ。
けれど室内で私の覚醒を促してくれたのは、あの白くて可愛いらしい愛犬ではなかった。
「何故ですかルイス様!」
起き抜けに飛び込んできたのは力強い男性のものだ。さらには大きくて、可愛らしさとは無縁の屈強な身体つきがちらつく。同じく主様の執務室に呼ばれていた従者のジオンだ。
彼も珍しく取り乱していることから、あの通告はジオンにとっても完全に予想外のものだったらしい。
密偵である私と従者のジオンは今日、秘密裏に主様からの呼び出しを受けていた。主様の執務室に集まり、新たな任務の指令かと待ち望んでいれば、突然の解雇が二人を襲ったというわけである。
「ルイス様! どうか今一度、考え直してはいただけませんか!?」
私が意識を魂を飛ばしている間にもジオンは必死に主様へと掛け合っていたらしい。
屈強な体格に強面のジオンは従者であると同時に主様の護衛でもある。その面構えは歴戦の猛者のように厳つく、筋肉のついた身体は屈強な戦士といった風格だ。
そんなジオンが焦りを浮かべるところを私は初めて目にしたように思う。かつて賊と遭遇した時でさえ落ち着き払っていたというのに、わかりやすいほど狼狽えていた。
そうして呆けていると、どこからか悲鳴が聞こえたことを憶えている。一緒になって「危ない」だとか「逃げて」とか、いろんな人の焦った声が混ざり合っていた。
それから身体に強い衝撃を感じた。
それで、それから……
沙里亜はサリアとして別の世界に生まれ変わっていた。
前世では文明の発達した世界の一般家庭出身。仕事はOLをしていたらしいけれど、まあ、ね。最後にクビになったとは言わないように!
所詮、過去は過去だと私は思う。私は新しいこの人生で主様という仕えるべき最高のお方と巡り合うことが出来た。それでいい。
そう、過去などは些末な問題だ。失われた過去より大切なのはいま、現在。
何故って? 何故なら……
生まれ変わった先でも解雇の危機!!
飛び起きた私は過去と現在が重なり混じり合うという、奇妙な体験をしていた。それというのも自身が長椅子に寝かされていたからだ。
けれど室内で私の覚醒を促してくれたのは、あの白くて可愛いらしい愛犬ではなかった。
「何故ですかルイス様!」
起き抜けに飛び込んできたのは力強い男性のものだ。さらには大きくて、可愛らしさとは無縁の屈強な身体つきがちらつく。同じく主様の執務室に呼ばれていた従者のジオンだ。
彼も珍しく取り乱していることから、あの通告はジオンにとっても完全に予想外のものだったらしい。
密偵である私と従者のジオンは今日、秘密裏に主様からの呼び出しを受けていた。主様の執務室に集まり、新たな任務の指令かと待ち望んでいれば、突然の解雇が二人を襲ったというわけである。
「ルイス様! どうか今一度、考え直してはいただけませんか!?」
私が意識を魂を飛ばしている間にもジオンは必死に主様へと掛け合っていたらしい。
屈強な体格に強面のジオンは従者であると同時に主様の護衛でもある。その面構えは歴戦の猛者のように厳つく、筋肉のついた身体は屈強な戦士といった風格だ。
そんなジオンが焦りを浮かべるところを私は初めて目にしたように思う。かつて賊と遭遇した時でさえ落ち着き払っていたというのに、わかりやすいほど狼狽えていた。