身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

 実家へ帰省するのも久しぶりなら、二宮の家の人間に会うのはそれ以上だった。姉は、今年は帰省するのだろうか。二宮家から来るのは、おばさまだけなのか。
 話というのが琴音の予想通り可乃子と閑の結婚だとしたら、子供染みたヤキモチは見せないように心の準備をしておかなければならない。

 家族ぐるみの付き合いは琴音が中一の夏で最後だったが、高校二年の時にも実は閑とだけ再会している。
 これまでたったひとりできた彼氏とまだ付き合う前のころ、一緒に市内の図書館に行った時だった。

『お姉ちゃん? ……と、あれ?』

 フロアに整然と並んだ長テーブル。一番端のテーブルの一番隅に姉の姿ともうひとり、男性が座っていて、それが閑だと琴音は初め、気がつかなかった。

『琴音の姉ちゃん?』
『うん、そう』
『あれ、姉ちゃんの彼氏? すっげイケメン』

 話し声が届いてしまったのか視線を感じたのか、伏せられていた男性の顔が上げられる。十メートルくらいの距離はあったが、まっすぐに目線が絡み合うのがはっきりとわかった。

『彼氏……っていうか……閑ちゃんっ?』

 思わず声のトーンを上げてしまう。慌てて口を閉じる琴音に、閑は最初驚いたように目を見開いたあと、くしゃりと相好を崩して手を振った。

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