身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
 少々恥ずかしいところを見せてしまったが、それでも自己主張して良かったと思えた。こんな風に笑ってもらえるのなら。

「今日、初めて琴音の手料理食べたな」
「……あ! どうだった? 美味しかった?」

「美味かった。ありがとう」
「よかった……お母さんに教えてもらいながらだったんだけどね。あ、物足りなくなかった?」

 閑が来るとわかっていたら、もうちょっとがっつりとカロリーがありそうなメニューをきっと考えただろう。男性には少しあっさりしすぎて物足りない内容だったかもしれない。

「いや。十分」
「本当に? あ! じゃあ、嫌いなものは? すきなものも。聞いておいて練習する」

 パーキングまでの道のりが、もっともっと長ければいいのにと思う。どうしてか、いつも閑といるときよりも、気分が高揚してするすると言葉が出てくる。

「すきなもの、と言われるとあんまり思い浮かばないけど、どうしても苦手なものはあるな……きゅうりとか」
「……きゅうり。あっ!」

 今日の酢の物に入っていたのを思い出し、思わず声を上げてしまう。

「大丈夫、酢の物はまだ食べられる。けどサラダに入ってる生のは苦手だな」
「……わかりました。覚えときますね」

 ――それにしても、どうしてきゅうり?

 嫌いになる要素が思い浮かばず、首を傾げた。

「……青臭い匂いがしないか?」
「そう? かな?」

 言われてみれば、青臭いような気がしないでもない。しかし食べられないほどではないと琴音は思うのだが、苦手な人からすれば我慢できないものなのか。

 そんな他愛ない話をしている間に、あっけなくパーキングに着いてしまった。

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