身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~

『言ったわよ? 高校受験の時に塾が一緒だったの』

『えっ、知らないよ? 聞いてない!』
『琴音、部活に夢中だったから聞き流しちゃったんだと思うわ』
『えーっ』

 確かに、中学に入ってから、部活動に中々身体がついていかなくて大変だった。その時に聞いたのを、すっかり忘れてたんだろうか。

『琴音、また後でね。レポートの提出日が近くて急いでるのよ。琴音も期末の試験勉強なんでしょう?』
『あ、うん……そう』

 納得できないでいると、可乃子が琴音に申し訳なさそうに眉を下げ、両手を合わせる。それから、隣にいる閑の服の袖を引っ張った。

『ね、ここの解釈だけど』
『ああ。……じゃあ、琴音、また』

 場所も場所だ。一応、誰も小さめの声で話していたけれど、それでもこれ以上の会話をするべきではないのはわかって、渋々その場を離れた。

 ――お姉ちゃんってもしかして、閑ちゃんのこと?

 いつのまにか再会していたふたり。再会した時のことを話してくれていて、琴音が忘れているだけだったとしても、それ以降だって閑の話を聞いたこともないのだ。

 その日、可乃子の帰りは夜の十時を回っていた。
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