身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
返事があってからドアを開ける。
「ただいま。ミルクティ買って来たよ」
「ああ、ありがとう。そこに置いておいて」
部屋の中を覗くと、可乃子は床に座りベッドに凭れながら、手の中にある書類に目を通している。持ち帰ってきた仕事をしているようだった。
邪魔をしてはいけないと思いつつ、開けてすぐの床に置くわけにもいかず、部屋の中に入ってミニテーブルの上に置く。
書類から顔を上げない可乃子に、琴音は居心地の悪さを感じながらももう一度声をかけた。
「お姉ちゃん、さっきはごめん。閑さんと会ったの久しぶりだったのに、邪魔しちゃって」
可乃子からしたら、数年ぶりに会うのに話したいことももっとたくさんあったのかもしれない。琴音は、再会してからもう何度も会っているのだし、やっぱりさっきの態度は大人げなかった。
素直にそう言うと、可乃子は昔みたいに余裕の笑顔で許してくれる。そう当たり前のように思っていたのは、琴音の甘えだったのだろうか。
書類から顔を上げた可乃子は確かに笑っていたけれど、言葉口調は棘のあるものだった。
「別に気にしてないわよ。子供の頃のまんまで笑っちゃった」
笑顔なのに、なぜかとても嫌味に聞こえるのはどうしてだろう。それは、可乃子の目が笑っていないからだとすぐに気が付く。