身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「……お姉ちゃん?」
琴音が知る姉は、いつも穏やかで優しくて、琴音を引っ張っていってくれる存在だった。琴音が欲しいと思うものを全部最初から持っている姉を妬む気持ちもあったけど、姉自身はいつも琴音に優しかったから嫌いにはなれない。子供の頃は寧ろ、両親によりも素直に甘えていたような気がする。
それなのに、今目の前の姉からは、剣呑な雰囲気が漂っている。琴音の知らない姉のようだった。
「なんでそんな言い方するの?」
「なんでって? 本当のことでしょ。昔っからそう。私と閑がふたりで遊ぼうと思っても、琴音が泣きながら追いかけてくるの」
くすくすと笑いながら昔を懐かしむセリフなのに、ぴりぴりと肌を刺す痛みを錯覚させられる。
「琴音は、私の周りのものなら何でも欲しがって癇癪起こすから。閑が〝可哀想だから〟って仕方なく立ち止まって。変わってないわね、相変わらず閑は優しいから」
はっと息を飲みこんだ。可乃子の言葉の棘が、今までで一番深く、琴音の心の奥に突き刺さる。
――可哀想だから。優しいから。
確かにそうだ。子供の頃の憧れの閑ちゃんはいつでも琴音に優しくて、だから大好きだった。