身ごもり秘夜~俺様御曹司と極甘な政略結婚はじめます~
「まあ、仕方ないけど。家の為の結婚だものね。二宮家も、染谷家の工場を見捨てるのは外聞も悪かったんでしょう。長い付き合いだし、それで後継者が出来るならってことよね」
まるで畳みかけるような早口な言い方は、可乃子らしくない。そうちらりと頭を過る。けれど、琴音も頭に血が上ってきてそこに意識は向けられなかった。
悲しい。姉にまさかこんな言い方をされるとは思ってもいなかったから、無防備なまま衝撃を受けてしまった。けれど、この結婚は琴音なりに考えて受け入れたつもりだ。
言われっぱなしになるのも悔しくて、ぐっと拳を握って声を絞り出した。
「い、家同士のことっていうのはちゃんとわかってるよ。それを承知で、私も閑さんも、決めたことだから!」
そう。だから、これからゆっくり夫婦になればいい。焦ることなんてないのだ。閑は優しいし誠実に接しようとしてくれている。
自分に必死にそう言い聞かせ、心を立て直そうとした。けれど、そこにまた可乃子の言葉が琴音の弱い部分を刺してくる。
「そうよね。だから、閑が優しいからって、あんまり子供みたいなことをしてたら呆れられるわよ。政略結婚なんだから」
「わかってるってば」
「そうかしら。子供の頃みたいな癇癪を起したら、閑が可哀想。結婚したってことは長年連れ添うってことなんだから、負担にならないようにしないとダメよ」
幾分、言い方が柔らかくなった。どうやら、琴音と閑の結婚に反対というわけではなさそうで少しだけほっとする。けれど、ずきずきと胸の奥が痛んで、また別の不安が湧いてきていた。